節税にもなり、借入もできる経営セーフティ共済。
「急に利益が出て税金が高くなりそう…」というときの節税策のひとつとして「経営セーフティ共済」というものがあります。
目次
経営セーフティ共済とは
経営セーフティ共済とは、「中小機構」というところが運営している中小事業者のための制度です。
取引先が倒産した際に、無担保・無保証人で掛金に応じて最高8,000万円までお金を借りることができ、掛金は全額を払った年の経費にすることができます。
個人事業主(フリーランス)でも法人でも入ることができます。(一定の制限あり)
経営セーフティ共済のメリット・デメリット
経営セーフティ共済のメリット
掛金が経費にできる
その年に払った掛金全額を事業の経費にすることができます。
掛金は月5,000〜200,000円まで5,000円単位で自由に設定することができ、800万円に達するまで掛けることができます。
1年分であれば前納した分も経費にできますので、最大で年間240万を経費にできるわけです。
「税金出ちゃうな〜」というときに期末までに払えば、240万×税率分の税金が安くなります。
前納する場合にはこちらの手続きが必要です。
引き落としたい月の5日までに書類が到着している必要があります。
なお、翌年も前納する場合は改めて手続きが必要です。
お客様を見ていても、初めて多くの税金が出る年度に入られる方が多いです。
ちなみに、掛金の金額は年の途中でも自由に変更できます。
借入ができる
状況に応じて2種類の借入れができます。
1つ目は、取引先が倒産した場合に借りられる「共済金」と呼ばれるもの。
この場合における「倒産」とは、いわゆる“夜逃げ”は該当せず、法的整理・私的整理などの客観的な事実が必要となります。
共済金は、回収困難となった売掛金等の額と、掛金総額の10倍に相当する額とのいずれか少ない金額(8,000万を限度)となります。
返済期間は以下のようになっており、据置期間(6ヶ月)経過後は毎月均等返済となります。
借入額 | 返済期間(()内は据置期間経過後の月数) |
---|---|
5,000万円未満 | 5年(54ヶ月) |
5,000万円以上6,500万円未満 | 6年(66ヶ月) |
6,500万円以上8,000万円以下 | 7年(78ヶ月) |
無担保・無保証人・無利子ですが、借入後は借入額の1/10が払い込んだ掛金からマイナスされます。(これを利息と考えることもできます)
もう一つは、「一時貸付」と呼ばれるもの。
こちらは取引先が倒産等していなくても、お金が必要になったときに運転資金または設備資金として借りることができます。
借入額は5万円単位(最低30万円)で、掛金の納付月数に応じて次の金額が限度となります。
掛金納付月数 | 一時貸付金の借入限度額 |
---|---|
1か月~11か月 | 0円 |
12か月~23か月 | 掛金総額 × 75% × 95% |
24か月~29か月 | 掛金総額 × 80% × 95% |
30か月~35か月 | 掛金総額 × 85% × 95% |
36か月~39か月 | 掛金総額 × 90% × 95% |
40か月以上 | 掛金総額 × 95% × 95% |
掛金総額が800万円の場合 | 800万円 × 100% × 95%(760万円) |
返済期間は1年で、期日一括返済となります。
無担保、無保証人ですが、こちらは利息が発生します。
利息はこの記事を書いている現在で年0.9%、借入時に一括で前払いとなります。
任意解約ができる
経営セーフティ共済はいつでも解約ができ、40ヶ月以上掛金を払っていれば100%戻ってきます。
ただし、11ヶ月以下の場合は1円も戻ってきませんので注意が必要です。
経営セーフティ共済のデメリット
解約時に税金がかかる
保険などと同じく、解約時には個人事業または会社にとって収入となります。
(基本的に払ったときに経費になるものは、もらったときに収益になります。)
つまり、売上と同じ扱いになり、利益が出ていれば税金がかかるということです。
解約のタイミングは注意が必要で、
- 利益がマイナス、赤字の繰越しがあるときに解約する
- 退職金などと組み合わせる
などの対策が必要になります。
法人の場合は何かしら対策ができますが、個人の場合は難しいです。
仮に40ヶ月掛けていて解約すると800万が戻ってくるわけですが、この800万は雑所得となります。
フリーランスの場合は退職金も出せませんので、丸々800万に税金がかかってくる可能性もあります。
個人の場合は、大きな経費が見込めなければあまり加入はおすすめできません。
お金が出ていく
払った分は経費にできますが、もちろんお金は出ていきます。
掛金の減額はできるものの、資金繰りには注意が必要です。
対応していない銀行がある
掛金の払込は口座振替となりますが、現在、すべての銀行に対応しているわけではありません。
詳しくは後述しますが、楽天銀行、ジャパンネット銀行などのネット専業銀行、ゆうちょ銀行などは対応しておらず、掛金の引き落とし口座として使えません。
都市銀行、地方銀行、信用金庫であればだいたい対応しています。
経営セーフティ共済の加入手続き
加入資格
詳しくは経営セーフティ共済のHPを見ていただければと思いますが、
- 1年以上事業を行っている
- 資本金が5,000万円以下または従業員が50人以下
であるひとり社長、フリーランスであれば問題なく加入できるはずです。(医療法人など一定のものは不可)
取り扱い窓口
経営セーフティ共済は銀行など金融機関が窓口になっています。
次項の必要書類を用意して取引銀行の窓口で相談してみましょう。
対応している銀行等はこちらを確認していただければと思います。(一番下の「金融機関一覧」参照)
必要書類
以下の書類を提示しなければならないため、事前に準備しておきましょう。
法人(会社)の場合
- 商業登記簿謄本または登記事項証明書→法務局で取得
- 法人税の確定申告書・決算書等一式(収受印またはメール詳細が必要)
- 法人税の納税証明書(その1)(納付書の控えでも可)→納税証明書はオンライン、郵送または税務署の窓口で取得
個人事業主(フリーランス)の場合
- 所得税の確定申告書・決算書等一式(収受印またはメール詳細が必要)
- 所得税の納税証明書(その1)(納付書の控えでも可)→納税証明書はオンライン、郵送または税務署の窓口で取得
- 白色申告の場合は、確定申告書を作成するときに使用した帳簿等
急に利益が出て税金が大きくなりそうなときには、経営セーフティ共済の加入を検討してみましょう。
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Postscript執筆後記
週末はずっと家フェス(フジロック配信鑑賞)。色々と思うことがあり、涙してしまう場面も。
来年は普通にフェスができる世の中に戻っていることを祈ります。
Something New一日一新
とある書類作成とある投稿