所得税の実質税率は5〜45%ではない。単純税率より実質税率。
「税金がどれくらいかかるか」を考える上では、実質的な税率を理解する必要があります。
目次
「ある所得を超えるといっきに税金が上がる」わけではない
記事執筆時現在、所得税の税率は次のようになっています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
これだけ見ると、「4,000万円以上稼ぐと45%税金がかかる」と思ってしまいますが、そう単純ではありません。
まず、一番左の「課税される所得金額」ですが、「収入」ではなく「所得」となっています。
会社員であれば、給与所得となり、給与所得は収入から一定額の経費を差し引いて計算します。
フリーランスなどの事業所得者であれば、売上からかかった経費を引いて計算します。
この経費を差し引いた後の金額から、さらに社会保険料控除、基礎控除などをマイナスし、最後に真ん中の列の「税率」をかけるわけです。
これがそのまま納める税金になるわけではなく、一番の右の列の「控除額」を引いた金額が最終的な所得税となります。
なぜこのような計算の仕方になっているのでしょうか。
仮に、所得が1,949,999円だとすると、税率は5%です。
所得が1,950,000円だとすると、10%になります。
単純に掛けてみると、税率5%では97,450円(端数処理後)、税率10%では195,000円となります。
たった1円所得が違うだけで、税金が2倍も変わってしまうのです。
これって何だか不公平ですよね。
この不公平感をなくすのが、「控除額」です。
所得が1,950,000円の場合、税金は
1,950,000×10%-97,500=97,500円
となります。
所得が1,949,999円の場合、
1,949,999×5%-=97,450円
端数処理などもあるものの、差額は50円となっています。
この控除額があることによって、所得が1,949,999円までは5%、それを超えた部分については10%で計算されるようになっています。
所得が一定額を超えると急に税金が高くなる、というわけではありません。
所得税率は5〜45%?
他の所得でも見てみましょう。
所得が320万のとき、所得税は222,500円。
所得が640万のとき、所得税は852,500円。
所得税額を所得で割り、実質税率を出してみます。
(実際には復興特別所得税(所得税の2.1%)もかかりますので、それも考慮しています。)
- 所得が320万のとき、7%
- 所得が640万のとき、13%
となります。
上の表では、税率は10%と20%で、10%の差がありますが、実質税率を出してみるとそこまで差はなく、かつ、税率も小さいのがわかります。
実際の所得税率は、単純税率よりも低くなります。
住民税・事業税も含めて考える
今度は、住民税・事業税も含めて考えてみます。
住民税の税率は一律10%です。
事業税は、青色申告控除前の所得が290万円以上、かつ、一定の事業の場合にかかります。
ここでは、課税対象の事業で、税率は5%とします。
所得が4,000万だとすると、以下のようになります。
実質所得税率は33%ですが、住民税と事業税もそれなりに高く、合わせると48%です。
「収入の半分が税金で持っていかれる」なんて言われたりしますが、ここまで来ると確かにそのとおりです。
ただ、これはあくまで経費や控除を引いたあとの「所得」です。
ひとりビジネスの場合、ここまで税金が高くなることはなかなかないでしょう。
ここまで高くなるのであれば、法人化をおすすめします。
所得が1,000万の場合も計算してみました。
復興特別所得税・住民税・事業税を合わせても、表の単純税率よりは低くなっています。
「所得税は所得が上がるほど高くなる」というのは何となく聞いたことがあっても、意外とその中身は知らないという方は多いのではないでしょうか。
税金を考えるときには、単純税率だけでなく、実質税率にも着目してみましょう。
※当記事の内容は執筆時現在の法令等に基づいております。改正や個別の案件等には対応していない場合がございますので、ご注意ください。
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Postscript執筆後記
週末は友人の結婚式へ。宣言の影響でお酒が飲めなかったのですが、ノンアルコールビール・ワインなどが充実しており、数年前に比べてだいぶ味が良くなっていると感じました。
もちろん生ビールの旨さにはかないませんが…笑
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