土地や建物を売ったときの税金計算で気を付けなければならない8つのこと。
土地や建物を売ったときに、税金面で気を付けなければならないことをまとめました。
目次
基本的には確定申告が必要
土地や建物を売却した場合、利益が出ることが多いと思います。
利益が出ていなければ確定申告は不要ですが、利益が出ていれば基本的に確定申告をしなければなりません。(その方の状況によって細かい要件は異なります。)
ちなみに、税務署はいくら利益が出ているかは申告しなければわかりませんが、所有権が移ったことは確認しようと思えばわかります。(不動産の謄本は誰でも取れますので)
土地建物の売却は他の所得と別計算
土地建物(不動産)の譲渡は分離課税といって、事業所得・不動産所得・給与所得などとは別に計算します。
給与収入がある人が事業で赤字を出している場合、給与収入と事業の赤字を相殺して税金を計算します。
一方、土地建物はこれらの所得とは別に計算しますので、土地建物の売却益と事業所得や不動産所得のマイナスは相殺することができません。
他の所得でマイナスが出ていたとしても、土地建物の売却から発生する税金を安くすることはできないというわけです。
ちなみに、土地建物と一緒に機械など(太陽光発電システムとか)を売った場合には、その機械は不動産ではない(動産)ため、また別の計算方法になります。
こちらは総合課税といって、事業所得や給与所得、不動産所得などと利益・赤字の相殺ができます。
所有期間によって税率が異なる
土地や建物を売った年の1月1日現在で、その土地や建物を買ってから5年経っているかどうかで税率が変わります。
譲渡所得のうち、上記の期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」といいます。
例えば、2021年中に売った場合は、その土地や建物の取得が2015年12月31日以前であれば「長期譲渡所得」に、2016年1月1日以後であれば「短期譲渡所得」になります。
税率は譲渡所得の長短によって下記のようになっています。
所得税+復興特別所得税 | 住民税 | 合計 | |
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 20.315% |
譲渡対価に含めなければならないもの
譲渡対価に含めなければいけないもので忘れがちなのが、固定資産税の清算金です。
固定資産税は、その年の1月1日の所有者に課されます。
たとえばその年の途中の2/28に譲渡した場合、固定資産税は売り主が払うことになりますが、3/1以降の期間にかかる固定資産税(未経過固定資産税)は買い主に負担してもらうのが慣習となっています。
この売却のときに買い主から受け取った固定資産税は、譲渡対価に含めなければなりません。
別に受け取らなくても法律上は問題ないので、「受け取った場合には固定資産税も含めて売却価額と考える」という理屈です。
取得費の計算
取得費とは「売却の原価」のイメージです。
「土地建物を買ったときに支払った金額」-「建物の所有期間の減価償却費」
で計算します。
取得費の注意点
以下のものが取得費に含まれます。
- 土地・建物の購入代金、建築代金、購入手数料、改良費など
- 購入したときの登録免許税(登記費用も含む)、不動産取得税、印紙税
- 借り主を立ち退かせるために払った立ち退き料
- 土地の造成費用
- 取得に際して支払った土地の測量費
- 所有権などを確保するために払った訴訟費用(相続財産である土地の遺産分割のための訴訟費用は☓)
- 建物の取り壊し費用
- 土地建物の購入のための借入金利子で、その土地建物の使用開始日までの期間に対応するもの
- すでに締結されている購入契約を解除して、別の土地建物を取得する場合に支払う違約金
また、忘れがちなのが購入時に売り主に払った固定資産税の日割り分です。
こちらは上記の売った側の逆の立場を考えればわかりやすいかと。
相手側で譲渡対価になっているものですので、購入側では取得価額に入れなければいけません。
一方、上記の費用のうち、事業所得や不動産所得の経費に入れたものは取得費となりません。
※固定資産税、登録免許税、不動産取得税は不動産所得の経費になります。
減価償却の注意点
居住用(非業務用)の建物の場合、通常とは異なる一定の算式で減価償却費を計算します。
(耐用年数の1.5倍の旧定額法償却率を使用)
不動産賃貸などの業務用の建物については、通常の減価償却費の合計額を取得価額から控除します。
償却を忘れている(経費に入れ忘れている)場合であっても、売却時までの本来の正しい償却額をマイナスすることに注意が必要です。
また、年の途中で売った場合には、その年の減価償却はしてもしなくてもどっちでも良いことになっています。
償却すると事業所得や不動産所得の経費にできますが、償却しない方が譲渡所得の取得費が増え、譲渡益を小さくできます。
譲渡所得の税率の方が高い場合には、償却しない方が有利です。
譲渡経費になるもの
以下のものは譲渡経費になり、取得費と合わせて譲渡対価から引くことができます。
- 譲渡のときの仲介手数料
- 譲渡のときの収入印紙代
- 売却に直接要した測量費
- 譲渡のための立ち退き料(身内への支払いは☓となる場合あり)
- 売却のための建物の取り壊し費用
- 契約変更の違約金
譲渡経費にならないもの
- 抵当権抹消費用
- 修繕費
- 固定資産税
- 税理士費用
- 借入金の利子
事業用不動産の譲渡の場合、これらは事業所得または不動産所得の経費になります。
所得金額によって使えなくなるもの
譲渡所得に限った話でないのですが、例年給与収入しかない人が土地建物を売ったりすると、その年だけ所得金額がどかっと上がります。
合計所得金額によっては、以下の控除が使えなくなります。
- 配偶者控除→1,000万円超
- 基礎控除→2,500万円超
- 住宅ローン控除→3,000万円超
いつも当たり前のように適用できていたものが適用できなくなる可能性がありますので、注意してください。
土地や建物を売った場合には、気をつけるポイントが沢山あります。
ご自身で申告書を作るときに参考になれば幸いです。
※当記事の内容は執筆時現在の法令等に基づいております。改正や個別の案件等には対応していない場合がございますので、ご注意ください。
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Postscript執筆後記
今日は確定申告をがっつり。その後、夜からこの記事を書き始めたのでだいぶ疲れました…。
それでも、ブログを書き終えると達成感と充実感が半端ないんですよね…笑