個人事業主がいつ法人成り(法人化)すべきか、というのは難しい問題ですが、法人化を考えるべきタイミングとして、「消費税の課税事業者になる直前」というのがひとつの答えとして考えられます。

目次

売上が1,000万円を超えたら消費税を納める必要がある

個人事業主の場合、2年前の年間売上が1,000万円を超えると、その年の確定申告では消費税を納めなければなりません。

消費税を納める必要のない事業者を「免税事業者」、消費税を納める必要のある事業者を「課税事業者」といいますが、免税事業者のときは、お客様に「税込み11,000円」と請求していても、消費税1,000円も含めてすべて自分の懐に入ってきていたわけです。これが、課税事業者になると1,000円はお客様から預かった消費税という扱いになり、国に納めなければなりません。

ところで、資本金1,000万円未満で法人を新たに設立した場合、特殊な要件に該当しなければ、2年間は免税事業者となります。

仮に、個人時代の1年目に売上が1,000万円を超えた場合、2年目の最後(3年目に入る直前)に法人成りすれば、個人と法人合わせて4年弱、免税期間を取れることになります。

(ただし、半年で売上が1,000万円を超え、かつ半年間の人件費も1,000万円を超えた場合、個人であっても法人であっても翌年から課税事業者になってしまいます。)

すでに去年の売上が1,000万円を超えており、今後も売上が増加していく見込みであれば、法人化を考えるタイミングと言えるでしょう。

棚卸資産を法人に移すと消費税がかかる

消費税がかかってくるのは、純粋な売上だけではありません。

課税事業者になってから法人成りすると、法人へ移した資産に対しても消費税がかかってきます。

「単に移すだけなのに、なぜ消費税が?」と思われるかもしれませんが、これは法律上、個人と法人は別の人格とみなされ、単に移した場合であっても、個人から法人への「売却」とみなされてしまうからです。

 

売却したとみなされてしまう資産のひとつが、棚卸資産、いわゆる在庫です。

法人成りの日の直前の在庫を、個人から法人へ売却したと考えます。

この場合の売却価額は、基本的に時価(外部へ売るときの売却価額)の70%以上の金額にする必要があります。例えば、100万で仕入れた商品を150万で売っている場合、少なくとも7割の105万円に対して消費税がかかってくるイメージです。

ちなみに、免税事業者であった期間に仕入れた棚卸資産の在庫にかかる消費税ついては、その在庫が課税事業者になった期間にもち越された場合、その期間の売上に対する消費税からマイナスできるという規定があります。

建物を法人に移すと消費税がかかる

棚卸資産同様、建物も法人名義へ変えた場合には譲渡という扱いになり、消費税がかかります。

個人から法人へ建物を移す場合、時価の1/2以上の価額で譲渡する必要があります。

時価の1/2で移せば、個人の所得税と消費税は抑えられますが、その分法人で利益が立ってしまったり、法人で計上できる減価償却費が少なくなり、個人・法人のトータルの税金でみると損してしまうこともあります。いくらで譲渡するかは悩みどころです。

減価償却資産を法人に移すと消費税がかかる

事業で使っていた機械や車などの減価償却資産も、基本的には建物と同じような取り扱いになります。ただ、建物の時価算定がやや複雑なのに対し、減価償却資産の場合は、帳簿価額、または中古車買取業者などに算定してもらった価額で譲渡すれば大丈夫です。

ちなみに、事業で使っていた車両などを法人へ移さずに、プライベート用に転用にした場合も、法人へ移す場合と同様「譲渡」という扱いになります。仮に、課税事業者であった年に個人事業を廃業して、車をプライベート用に変えた場合は、帳簿価額の1/2以上の価額で売ったという扱いになり、その分の消費税を納める必要があります。

 

かなりざっくりではありますが、このように、課税事業者になってから法人成りをすると、思わぬところで消費税がかかってきます。

「法人成りをした年に、法人で課税事業者を選択し、多額の設備投資をして消費税の還付を受ける」といったような特殊な状況であれば、課税事業者になってから法人成りしても損をしないケースもあります。

そうでない場合は、基本的には課税事業者になる直前に法人成りをした方が、消費税の観点からは得をすることが多いです。

年間売上が1,000万円を超えたフリーランスの方は、法人成りを検討してみても良いかと思います。

Postscript執筆後記

先日、税理士受験時代の仲間と久しぶりに飲んできました。
開業祝いにお菓子とプリザーブドフラワーをいただきました。

Something New一日一新

キッチンカーでドライカレー
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Seiji Aihara / 相原 征爾

Seiji Aihara / 相原 征爾

フリーランスの税理士。
主にひとり社長、フリーランス、スタートアップ企業のサポートをしています。
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好きなものは音楽、映画、インターネット、カレー、クラフトビール。

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