発生主義と現金主義。売上・経費はいつ計上するのか。
売上・経費はいつの時点で計上するのでしょうか。
発生主義と現金主義の基本、決算や確定申告での具体的なやり方についてまとめてみました。
目次
発生主義と現金主義
売上や経費をいつ計上するかは、主に「発生主義」と「現金主義」という2つの考え方があります。
発生主義とは
発生主義とは、売上・経費を発生したときに計上する考え方です。
たとえば、今月に100万円売り上げたものの、入金は2ヶ月後だとします。
この場合、今月の時点で売上を計上します。
仕訳にすると以下のような形になります。
借方 | 貸方 | |
---|---|---|
売上時(今月) | 売掛金 100万 | 売上 100万 |
入金時(2ヶ月後) | 現金預金 100万 | 売掛金 100万 |
なお、売上の時点はいつになるかですが、モノを販売する場合はその販売(商品の引き渡し)したとき、サービスであれば実際にそのサービスを提供したときです。
店舗ビジネスであれば、実際にお客様にモノを販売した時点となります。
セミナーやコンサルティングであれば、いつ入金されたかにかかわらず実際にセミナーやコンサルティングをした日の売上となります。
もう少し特殊なケースもあります。
店舗での対面販売は売った時点がわかりやすいですが、たとえばAmazonなどネットで売った場合は、発送した時点とお客様にモノが届く時点にずれがあります。
この場合は、発送した時点で売上計上とすることが多いです。
WEBサイト制作のようなネット上で販売→納品が完結するようなサービスの場合、相手方に納品もしくは相手方が検収した時点を売上とするケースが多いです。
お客様にサイトを納品し、実際に動作確認が完了してお客様の方でサイトを使えるようになっていれば、売上計上して問題ないでしょう。
お試し期間があるような販売・サービスの場合は、お試し期間が終わり、相手が購入の意思を示した時点となります。
なお、これらの出荷・検収・納品などの具体的な売上時点は、一度決めたら毎期継続して適用する必要があります。
上記は売る側の立場ですが、経費の場合も全く同じです。
いつお金を払ったかにかかわらず、発生主義では実際に商品を買ったとき、サービスを受けたときに経費計上します。
現金主義とは
現金主義は発生主義の反対で、実際にお金の入出金があったときに売上・経費の計上をします。
さきほどと同じ例、「今月に100万円売り上げ、入金は2ヶ月後」の場合、入金された時点で売上を計上します。
仕訳にすると以下のような形になります。
借方 | 貸方 | |
---|---|---|
売上時(今月) | – | – |
入金時(2ヶ月後) | 現金預金 100万 | 売上 100万 |
入出金の時点以外は何も処理をしません。
経費の場合もまったく同じ考え方で、払ったときに経費計上します。
決算・確定申告では発生主義が原則
法人の売上・経費の計上は基本的に発生主義で行わなければなりません。
個人の場合も、青色申告で55万または65万円の特別控除を受ける場合には発生主義で経理をする必要があります。
ただし、前々年の所得が300万円以下で、一定の届出をしていれば現金主義による記帳も認められています。
[手続名]現金主義による所得計算の特例を受けるための手続|国税庁
また、経費については例外も認められています。
- 1年以内にサービス提供を受ける
- 毎期継続適用している
という条件を満たしていれば、前払いであっても払ったときの経費にすることができます。
たとえば、家賃は通常翌月分を前月末日までに払うことが多いですが、この前払い分はその期の経費とすることができます。
ただし、翌年も同じように前払い分を払ったときの経費として処理することが必要です。
ちなみに、請求書をいつ出したかというのは発生主義とは関係ありません。
請求書の発行日はいくらでも操作できてしまいますので、あくまで実際にいつ売り上げたか・買ったかというのがポイントになります。
本来今期に入れるべきものが来期に入っていることを「期ズレ」と呼びますが、税務調査でもこの「期ズレ」は良く指摘されます。
きちんと漏れがないように発生主義で計上していきたいものです。
発生主義で計上するには
毎月発生主義で経理する
期中は現金主義で経理し、期末だけ発生主義に直すということも認められています。
期中は入出金の時点で仕訳をし、期末だけ売掛金・買掛金・未払金などを計上する方法です。
ただ、このやり方では期中の時点で正確な損益の金額がわかりません。
そのため、納税予測がしづらく、「期が締まってから税金を計算してみたら、予想をはるかに上回っていた」ということもありえます。
期末だけ売掛・買掛を計上しようとすると、普段やっていないため取引が漏れやすくなる恐れもあります。
「期中現金・期末発生主義」ではこのようなデメリットがあるため、あまりおすすめできません。
できれば毎月発生ベースで計上するのがベストです。
毎月発生ベースで計上するためには、日々きちんと経理をし、毎月会計データのチェックをしなければなりません。
そのためには、できるだけ細かいスパン、可能であれば毎日経理をするのがおすすめです。
なんだかんだ毎日が一番面倒くさくなく、楽です。
僕自身、毎日自分で経理をしていますが、「税理士だから」というわけではなく、単純にこれが一番楽だからです。
クラウド会計ソフトを使う
freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトは、請求書の作成・送付も行うことができます。
請求書を発行するとそれが会計ソフト側に連動され、仕訳を起こすことができますので、発生主義での計上忘れが防げます。
仕入れや経費なども、クレジットカードで買うようにし、そのクレジットカードを会計ソフトに連携してしまえば自動で発生日(クレジットカードを切った日)で計上することができます。
そして、預金も連携しておけば、預金の取引を登録するときはすでに計上している売掛金・買掛金・未払金を取り崩していくだけですので、チェックも楽になります。
請求書・預金を確認する
期中は多少漏れがあっても問題ないですが、決算・確定申告のときには発生ベースでの漏れがあってはいけません。
もれを防ぐには、売上・支払いともに請求書をきちんと確認し、すべての取引が会計ソフトに入っているか確認します。
また、預金口座に実際に入出金があるかも確認しておきます。
通帳かネットバンクの取引明細を見て、翌月や翌々月に入出金があるのに期末までに計上されてないものがないかチェックしていきます。
「発生主義」と聞くと難しそうですが、考え方はシンプルです。
利益予測・納税予測にも役立ち、経理を事業に活かすことができます。
ぜひ発生主義に慣れていきましょう。
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Postscript執筆後記
友人に「車椅子バスケの鳥海選手にちょっと似てる」と言われてから車椅子バスケに興味を持ち、パラリンピックをほぼ毎試合見ています。昨日はオーストラリアに接戦で勝利。
明日は準決勝なので楽しみです。