ひとり社長の節税の要は、役員報酬を正しく決めること。
ひとり社長の節税の基本は役員報酬です。
役員報酬の金額を正しく設定することで、大幅な節税となる場合があります。
目次
会社を作ると自分に給料が出せる
フリーランス(個人事業主)とひとり社長(法人)の大きな違いは自分に給料を出せることです。
フリーランスでも、従業員を雇っていたり、家族に給料を出すことはできますが、自分自身に給料を出すことはできません。
売上から経費を引いた利益の中から、直接生活費を捻出するイメージです。
もちろん、この生活費は事業の経費にはなりません。
一方、法人の場合は役員報酬という形で自分に給料を出すことができます。
この給料は年一回しか金額を変えられない(一度決めたら変えられるのは翌期首以降)という制約はありますが、法人の経費になります。
経費ということは、利益を減らすことができ、結果として法人税を減らすことが可能です。
もちろん、この給料には所得税・住民税がかかります。
「法人税が減っても所得税を払うなら変わらないではないか」と思われるかもしれませんが、法人税と所得税では税率が違います。
法人税はだいたい30%前後、所得税は所得に応じて5〜45%(住民税を考慮すると15〜55%)です。
この税率の違いを上手く利用すれば節税することができます。
節税は社会保険も含めて考える
税金だけでなく、節税を考える上で忘れてはいけないのが社会保険です。
個人の場合は国民健康保険・国民年金、法人の場合は健康保険・厚生年金に加入します。(40歳以上であれば、それぞれ介護保険も加入)
金額の決まり方には、主に次のような違いがあります。
フリーランス | 法人 | |
健康保険 | 所得によって決まる(上限あり) | 給料+通勤手当によって決まる |
年金 | 一律月額16,540円(令和2年度) | 給料+通勤手当によって決まる |
扶養の人数による増減 | 扶養人数に応じて増える | なし |
保険料の負担 | 個人のみ | 個人+法人 |
フリーランスの場合、国民年金は一律で、国民健康保険は所得によって変わってきます。所得が上がれば保険料も上がってしまうので、自分で操作するのは難しいです。
フリーランスが法人化すると、会社の方で強制的に社会保険に加入することになります。
こちらは、上記の表のとおり給料と通勤手当の金額によって決まりますので、給料を低く抑えることで、社会保険も安くすることができます。
節税というと、純粋な税金だけを考えがちですが、社会保険も税金のようなものです。
税金と一緒で自分のお金が出ていくことには変わりありませんので、個人の所得税・法人の法人税・社会保険のトータルのバランスを見て役員報酬を決めることが節税に繋がります。
役員報酬による節税額の変動
例として、年商2,000万、利益1,600万のフリーランスの税金・社会保険を試算してみます。
(医療費控除、ふるさと納税なども考慮しています。)
今回の場合、所得税と住民税、事業税はトータルで440万くらいで、すべて合わせた実質税率は31%程度です。
この利益ベースで法人成りした場合を考えてみましょう。
自分への給料である役員報酬と社会保険の会社負担分(法定福利費)は法人の経費です。
こちらも考慮して、役員報酬の金額を変えてシミュレーションしてみると、以下のグラフのようになります。
(縦軸が負担合計、横軸が月額役員報酬(単位:円))
個人だけの場合が社会保険は一番安いものの、トータルでの負担は一番大きく、法人化して月50万円程度の役員報酬を出すのが最適だとわかります。それより役員報酬を上げていくと、今度はトータルでの負担が増えていってしまいます。
月50万の役員報酬のとき、法人税は200万程度(実質税率は25%)、役員報酬にかかる個人の税金はトータル55万程度(実質税率は13%。事業所得がなくなるので事業税はかかりません)、社会保険の負担は法人・個人それぞれ90万程度です。
個々の内訳だけ考えていてもトータルで特なのか損なのか良くわかりませんが、このように全てを考慮してグラフなどにしてみると最適解がわかります。
もちろん、利益はあくまで予測なので実際とずれることはあります。
それでも、きちんと個人の税金・法人の税金・社会保険を考慮して役員報酬を決めれば節税できることが多いです。
(これに、社宅なども導入すればさらに個人の税金・社会保険を抑えることもできます。)
実際の法人成りでは設立費用・消費税などの考慮も必要ですが、ある程度の売上・利益が出ているフリーランスの方は、法人成りも検討してみてください。
適切なタイミングで法人化すれば、10年〜20年で1千万円以上得することもありえます。
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Postscript執筆後記
今日は確定申告関係を中心に。そういえば、今朝ネットバンクをチェックしてみると医療費が戻ってきていました。(申請書を出してから2週間くらい)
普段、あまり健康保険のありがたみを感じることは少ないですが、こういう時は嬉しいですね。